ワサビスタンの通信事情

ワサビスタンでは旧ソ連時代に整備された固定電話網からの置き換えが遅まきながらも進みつつありますが、2010年頃からはスマートフォンが爆発的に普及しています。また、学校ではタブレットを使った学習が日本より早く進むなど、部分的には先進的なインフラが整っている状況です。 ワサビスタンでは旧ソ連諸国でありロシア語話者もいることから、ロシアで人気のSNS、テレグラムが市民権を得ています。勿論、FacebookやInstagram、Twitterも一定のユーザーがいます。しかしそれらに増して近年、標準的なコミュニケーションツールとして市民権を得ているアプリが “Norosy”(ノロシー)です。 このアプリでは、選択肢の中から「狼煙(のろし)」を選び、相手に送ります。文字もその他の画像も一切送ることができないため、相手との間である狼煙がどのような意味をもつか、予め決めておかねばなりません。しかし私たちが普段よく使うメッセージを思い起こすと、たとえば「今から家に帰ります」など定型的なものが多く、さほどの情報量は必要ないことが多いかと思います。こうした単機能性がウケたのか、ワサビスタンにおいては老若男女このNorosyを使っています。 この他、郵便公社のサービスが悪いことから民間の郵便サービスが普及しており、DHLやFedexのような外資に並びワサビスタン資本のサービス「ヒキャーク」(Хикяк)も使われています。これは「車を使い楽をして運んだメッセージに価値はない」という創業者ムラット・トビドーグの哲学を具現化したサービスで、郵便物を人の手・足で駅伝方式で運ぶことが特徴です。街道沿いには自社で整備した宿場町があり、そこで撮影した運び手の姿と地域の人々の姿が写真に収められ、同梱されるところが「あたたかみがある」としてユーザーの好評を得ています。(エクスプレスを選ぶと馬で運ぶため時間は大幅に短縮されます。)通信に時間を追い求める価値観からは非効率に見えますが、そもそも時間を追い求める通信はインターネットで大概は代替されるため、そこにない温かみを求めるユーザーのニーズにマッチしているといえるでしょう。また、人を多く雇うものの、街道沿いに整備した宿泊施設からの収入もあるため、サービスの費用はそこまで高価ではありません。いわば、通信業と観光業が融合したサービスといえるでしょう。また、自前で陸...